甲州名物ほうとうとは?富士吉田・河口湖でよく食べられる山梨名物の歴史・特徴・食文化について

ほうとうの歴史

ほうとうの歴史

「ほうとう」

それは、小麦粉を練った生地で作った、幅が広い太麺をたくさんの野菜と一緒に味噌仕立ての汁で煮込んだ料理です。山梨県を中心とした地域において、2007年に農林水産省により各地に伝わるふるさとの味の中から決める「農山漁村の郷土料理百選」にも選ばれています。まずは、ほうとうの歴史的背景からご紹介していきます。

ほうとうの名前の由来は???

ほうとうの歴史

皆さんは「ほうとう」と聞いて何を思い浮かべますか?うどんの一種なのか、具だくさんの食べ物のコトなのか。麺類であることには間違いありませんが、ほうとうと聞いてもいまいちピンとこない人が多いのではないでしょうか。

では、まずはほうとうがほうとうと呼ばれるようになった所以をお伝えします。

まずは上の写真を見てください。「餺飩」と書かれた文字の読み仮名に「ほうとう」と書かれています。しかし、インターネットで検索しようにも、漢字辞典で検索しようにも「ほうとう」と打って「餺飩」とは出てきません。なぜなら、「餺飩」は「ほうとう」と読むのではなく、「はくたく」と読むからです。

では、なぜ「はくたく」と読むのが正しいのに、「ほうとう」と読んでしまっているのでしょうか。

①餺飩はこねた小麦粉を麺棒で薄く延ばし、煮込んだうどんのことを指しますが、奈良時代の頃に遣唐使などによって大陸から伝わった食べ物だそうです。そして平安時代に餺飩(はくたく)の音が訛って、ほうとうと呼ぶようになったと言われています。

②戦国時代に武田信玄が甲州に訪れた遣唐使から伝承され、川中島の戦いの折に考え出された陣中食で、俗に“武田汁”と言われました。生麺と季節の野菜を使い味噌汁の中で煮込むというもので、手間がかからず、消化も良く栄養価も高いことから、餺飩は野戦食として用いられたと伝えられています。武田信玄自らの伝家の宝刀で、麺を細長く切ったことから、“宝刀”(ほうとう)の名が生まれたという伝説もあります。

以上二つが濃厚な説として挙げられますが、「ほうとう」には他にも様々な歴史やいわれがあります。

ほうとうは山梨県の自然に合っていた???

富士吉田市

ほうとうは、「うまいもんだよカボチャのほうとう」といわれるほどに、山梨県民の生活に密着しています。では、なぜこんなにも地域に根付くようになるまで長く食べられてきたのでしょうか。

それには、山地が多く”山国”と呼ばれる山梨県の気候風土や富士山の麓という地理的条件が大きく関係しています。山梨県の大部分が山地であることは、急斜面が多いということです。急斜面が多いと水田を作るのが難しくなるだけではなく、標高が全般的に高いので稲作に適していなかったのです。

また、富士山の麓の町の地質は、昔の噴火によって流れ出た溶岩流や火山灰土で構成されているのです。こうした条件から、昔から米の栽培は容易ではなく、米はかなり貴重で滅多に食べられるものではありませんでした。小麦粉はうどんよりも少量で済み、ほとんどの具を野菜で補えるので昔から庶民の日常食として食べられてきたという歴史的背景があります。

食生活の中心となることで、昔は「ほうとうの麺を打てないと一人前でない」と言われ、嫁入り修行の第一歩であったようです。

ほうとうの特徴

郷土食として、これほど普及しているものも少なく、「朝はおねり、昼は麦飯、夜はカボチャのほうとう」というのが山梨(甲州)の日常生活のリズムでした。「うまいもんだよカボチャのほうとう」ということわざもあるように、全国に誇りうる郷土食であり、長い歴史の中で今でも多くの人々に親しまれています。

次に、ほうとうの特徴である「麺」・「汁」・「具材」について解説していきます。

ほうとうの特徴①麺

ほうとうの歴史

ほうとうは、うどんやそばと違って生麺をそのまま具材と一緒に煮込むので、汁にとろみがついて冷めにくいのが特徴です。麺には塩を練り込まないのでコシは出ませんが、塩抜きする必要が無いのでそのまま具材と一緒に煮込むことができます。(基本的には寝かさない)

薄く幅が広いことが特徴のほうとうの麺ですが、これは名古屋のきしめんよりも薄いと言われています。

麺の生地を切るときは、大体厚さが1.5~3㎜、幅が8㎜~1㎝ほどに切ります。もちもちとした食感で、ちぎって煮ることも多く、麺だけでなくしらたまのような感覚でも食べられます。

ほうとうの特徴②汁

ほうとう体験

ほうとうの汁は基本的に味噌ベースです。かつて味噌は、各家庭で手作りされた甲州味噌と呼ばれる、米麹と麦麹の両方を使って仕込んだもので作られることが主流でした。

信州味噌に近く塩気が強いのが特徴です。これにカボチャを煮崩して溶かしたものが美味であるとされますが、カボチャを溶かすまで煮るのか、否かは地域差があります。

この甲州味噌の塩気とカボチャの甘味とが渾然一体となった奥深い風味がほうとうの美味さの最大の特徴です。出汁は煮干しで取り、家庭では出し殻もそのまま入れられます。

ほうとうの特徴③具材

ほうとうの歴史

ほうとうの出来上がりの写真を見てみると、ごつごつとした大きな具材が乗っているのを目にします。

ほうとうを作る時に、昔から小麦粉の使用量を抑えようと野菜を多めに使ったのが主な理由ですが、実際に見てみると想像以上に多くの具材が入っています。かぼちゃ、しいたけ、山菜、山芋、ジャガイモ、ネギ、人参、白菜まどなど…。

特にかぼちゃは「うまいもんだよカボチャのほうとう」という言葉があるように、ほうとう=かぼちゃと言っていいほど欠かせない具材となりました。

お店によっては「鴨肉ほうとう」、「熊肉ほうとう」、「猪肉ほうとう」、「あずきほうとう」、「すっぽんほうとう」などバリエーションに富んだメニューになっています。

ほうとう作り体験についてはコチラ

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